㊥腹七・五分で2年間(バイオスフィア実験)
「サルやネズミの実験ではねぇ……」
これだけでは、まだ納得しかねている人もいるかもしれない。じつは、ヒトに対してもカロリー制限による実験がすでに行なわれているのです。そして、その人体実験でもサルと同じ効果が証明されています。
ーヒトでの研究”バイオスフィア″8人の人体実験記録ー
それは男女8人を、完全に外界から遮断した人工空間で生活させた実験です。”バイオスフィア2″と命名されたドーム状の人工環境。まさに「宇宙ドーム」と呼ぶべきSF的外観です。そこで選抜された8人のクルーたちは、この密閉空間でなんと2年間も生活を送ったのです。彼らは、この空間で自給自足の日々を送りました。この計画は将来の宇宙旅行などを想定したものです。密閉した極限空間でのヒトの生理的、心理的な影響を観察したのです。実験クルーたちの摂取カロリーは中程度の「カロリー制限」(25%削減)に相当する1800キロカロリーに設定されました。つまり8人は腹七・五分の日常生活を送ったのです。
㊥体重、血糖、脂質、血圧などが改善
2年間の”ドーム〟での少食ライフは、どんな結果をもたらしたでしょう?彼らの平均体重は18%減少して、その後安定。さらに「血液中リン脂質量」減少、「血中コレステロール値」低下、「インスリン値」低下、「血糖値」低下……などが観察されました。つまり、身体の脂肪分や血糖分が低下して、スリムでひき締まった健康体になったのです。8人の記録は全員が「体重」「血糖」「コレステロール」「血圧」「白血球」が低めに改善されています。
その一人の例をみると次のように全数値が減っています。①体重(94171也)、②「血糖」 (105 > 82mg/dl)、③「コレステロール」 (215 > 129mg/dl)、④「血圧」 (100/70 > 80/50)、⑤「白血球」 (6500 > 4100個/μl)この隊員は、体重を4分の3にするダイエットにも成功しています。他の隊員たちも同じ。この”バイオスフィア2″での人体実験は、カロリー制限が人体に与える影響について貴重なデータを提供しています。つまり、腹七・五分でも人体は理想的な健康状態に近づくのです。
㊥「食べない工夫」をすれば「歳を取らない」
以上のように 「カロリー制限」が老化防止・若返りのク秘策″であることは、まちがいありません。「老化マーカー」という指標があります。それは「シミ」「しわ」「たるみ」「白髪」……など加齢変化を示す「生理指数」 です。なんと、それは約300項目もあるそうです。ところが、米国立老化研究所の報告によれば「カロリー制限」を行なうだけで、その80~90%が改善されることが、証明されているのです。 食べない工夫で歳をとらなくなるわけです。これほどありがたい健康法はありません。なにしろ食費が助かる。買物や料理の手間も省ける。光熱費も助かるうえに、お茶碗を洗わなくて済む……とよいことずくめなのです。
㊥2倍食い過ぎ、寿命が半減!
カロリー6割で寿命が2倍……。マッケイ報告からウィスコンシン大実験まで、あらゆる動物実験がカロリーをほぼ半減することで寿命が1・5~2倍にのびることを証明しています。しかし、わたしは、そもそも「カロリー制限」したら「寿命が伸びた!」と、驚くことじたいがおかしいと思っています。たとえばマウスの実験ではカロリー「半分」にしたら寿命が「2倍」にのびた……と、驚嘆する。これは逆でしょう。それまで「2倍」食っていたから、寿命が「半分」だった。これが、正しい。マウスにとってとるべき理想カロリーは、その「半分量」が正しい。だから、マウスたちは本来の健康と長寿を達成したのです。サルもミジンコも、そして人間も同じです。「食べたい」だけ与えるエサが正常の量だと錯覚していたのです。同様に「食べたい」だけ食べるのが”正しい〟食生活だと、人類はかんちがいしてきたのです。見方を変えるべきです。それは、〝誤った″食生活だったのです。食事量は、食べたい量の「半分」が正しかった。それを、2倍も「食べたい」だけ食べさせたから実験動物たちの寿命も縮んだのです。「エサを半減」=「自然な状態」です。だから、実験でカロリー半減したら、本来の自然な状態に戻っただけです。サルも同じです。そして、人間も同じなのです。だいたい24時間”満腹〟ということ自体が自然界ではありえない。あってはいけない。”空腹感″ こそが生命力の源泉なのです。 野生動物はふだんは食べない(食べられない)。だから生存本能をギラギラ研ぎ澄まして、荒野を駆けめぐります。そのために生命力や自然治癒力を最高度に保って生きているのです。その姿は力強く、躍動感に満ち溢れ、息を呑むほどに優美です。
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