40年前にはじめて読み、今もそのときの衝撃と興奮を思い出せる本に、序文を書いてほしいとご指名をいただいたことは、とても光栄なことだ。
とはいえ、本書は私が音読んだ本と全く同じものではない。なぜなら、1963年当時は妥当だった内容のいくつかを、著者のジエンセン氏が慎重に、そして見事に編纂しなおし、現代の神経科学や心理学の理論や研究結果をふまえた内容へと増補改訂したからである。ただし、原著『眠りながら成功する』の理論の核心的な部分は変わっていない。
潜在意識のエゴ、つまり意識的な心は、現実や認識されていることがらを表面的にながめ、五感という限られた感覚だけに注意を向けている。
けれども、平凡な日常のかげに、気づかれていない、勇壮な精神活動が隠れているのだ。 残念なことに、現代の科学者のほとんどが、心は脳の中の分子同士の、謎に包まれた立証できない相互作用から生まれると信じている。つまり、心の働きには原因が存在すると考えている。そしてこれは、人間という存在についての、非常に還元主義的で限定的な解釈に、人間の可能性とより深い実在性をとことん否定する見解につながる。
しかし、私たちの知性がもつ、より深く豊かな能力や、意識の下の回廊の存在についての、ジョセフ・マーフィーのすぐれた洞察が、数えきれないほど多くの人々に心の奥底では知っているが知っていることを忘れてしまっていることを思い出させてくれた。それは、私たちは、理性的な心だけではとうてい説明のつかない存在だ、ということだ。
本書は、たとえば「人は思考の産物である」というプツダの言葉のような、古来の知恵を思い出させる。さらにさかのぼれば、バガヴアツド・ギーター(ヒンズー教徒の座右の聖典とされる宗教叙事詩)にある「人は自身が信じることによってつくられる信じれば、そのとおりになるのだ」 という言葉を。
理性的な心は、ときに、人が潜在能力を存分に発揮するのを妨げる。その視野の狭さが可能性をせばめ、潜在意識が行う実験劇場から、さっさと私たちを切り離す。それこそが、私たちのパワーの其の源流だというのに。心の原生林ともいえるこの潜在意識には、本物の潜在能力が眠っている直感力、いつもと違う気づき、夢、宇宙の情報場との交信、心理的、精神的な世界、そしてそう、神秘の世界が。
ここに善かれた自分を変える方法は、12歳の子どもからその祖父母まで、すべての世代の人々にとってわかりやすく、使いやすいものだ。これはまた、アインシュタインが好んで使った名言、「すべてのものはできるだけシンプルにつくられるべきだ。ただしシンプルすぎてはいけない」 を守って善かれている。
本書を開き、ジョセフ・マーフィーとジェームス・ジュンセンによる幅広い理論をたどるのは、とてつもなく楽しい体験だった。人には奇跡を起こす潜在的能力があるという記述に始まり、より深いところにある心を呼び覚まして心身の癒しに役立てる方法、どうすれば抑制的な思考や不安にかられた行動を克服できるか、自分には富を手にする資格があるという自信を育てるにはどうすればよいか、心を癒す夢をもつ方法、成功を阻む障害をいかにして克服するか、そして、潜在意識を再教育・再プログラムして、自分にもっともふさわしい、愛にあふれ、成功した、健康的な未来を可能にする方法まで。そしてそう、もちろんそれ以外にも多くのことが善かれている。
後半へ続く
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