この地球上の生物のうち、人だけに、習慣を変える力がある。
人だけに、自らの運命をつくらあげる力がある。
われわれの世代が体験した最大の革新的発見は、
人は心のもちようを改めることにより、
人生のありようを変えることができる、という事実である。
ウイリアム・ジェームス
献辞
この本を、私の2人の孫たち、マヤとタッカーに、そしてこの地球上のすべての子ど
もたちに捧げる。現代文明の未来は君たちの手の中にある。人類の意識を高めることに
ょってのみ、私たちは愛情と調和に満ちた平和な世界でのびのびと暮らすことができる。
1800年代の半ばにアメリカで、許しがたい制度だとして奴隷制が廃止されたように、
未来を担う君たちは、宗教や政治的信条、その他のあらゆる主義や信念の違いを理由に
他者を攻撃してもよい、という考えを捨てるべきだ。
私たちの現実は、私たちによって集合的につくり上げられるのだから。
グランパより
ジョセフ・マーフィー博士は、自己イメージ心理学の偉大な創始者の一人だ。私が博士の教えにはじめて触れたのは1969年だが、そのときは博士の名を聞いたことはなかったし、博士の1963年の著書『眠りながら成功する』(産業能率大学出版部)のことも知らなかった。
1969年の10月、私は妻のジェリとともに「エグゼクティブ・ダイナミクス」と銘打つ4日間のセミナーに参加した。講師は、そのセミナーの創設者で今は亡きジョン・ボイルだ(のちにこのセミナーは、「オメガ」と名称を変えた)。ふたりともこのようなセミナーに参加するのは初めてで、講義の内容に夢中で聞き入った。
4日間のセミナーを受けてみてわかったのは、
人の心の中では、意識と潜在意識が密接に関わり合っているということだった。
潜在意識は、意識が出した「命令」をすべて遂行している…………それがよい結果になるか黒い結果になるかはおかまいなしに。私たちは一日中自分に話しかけ(「心の声」)、自分は何が好きで何が嫌いか、何が「得意」 で、どの分野がまるで「だめ」なのか、評価している。本書を読めば、私たちのものの見方や信念、意見、評価のすべてが、私たちが将来どんな人間になり、何をするかを決めていることがわかる。そしてたいていの人は、ある分野は得意だが、それ以外はだめな自分のことを「ぼくはこうだか
ら」 と決めつけて一生を過している。
ジョン・ボイルからはこんなことも学んだ。それは、すでに役に立たなくなった考えや考え方の癖を、自分の責任でやめたり修正したりできるということ、そして、そんなふうに自分を変えるための特別な方法があって、学習によって身につけられるということだ。その方法は、本書に書かれている。
それから40年、私は繰り返しオメガセミナーを受講し、とうとうオメガの講師として熱心に授業に取り組むまでになった。ジョンには、オメガで教えていることをどこで学んだのかとたびたび尋ねたが、いつも決まってジョセフ・マーフィーという人から学んだという答えが返ってくるだけだった。インターネットなどない時代だったので、「ジョセフ・マーフィー」をグーグルで検索することもできず、ジョンも、マーフィーが本を書いていることは言わなかった。
オメガの理論への理解が深まり、オメガの講師の仕事もすっかり板についた私は、潜在意識と、意識的な心がもつカに関する理解を深めるために、オメガとは無関係の書物やセミナ一にも目を向けるようになった。そしてそれが、私を1人の著者へと導いた。ジョセフ・マーフィー博士だ。
2005年のこと、同僚のトムが私のオフィスにやって来て、君なら気に入るはずだ、と1冊の本を差し出した。『眠りながら成功する』と題したマーフィー博士の著書だった。私は内心驚いた。「まさか! これって、ジョン・ボイルが教わったというあのジョセフ・マーフィーなのか?」。本当にそうだった。
本をじっくり読んでみると、オメガの講義内容のほとんどはこの本に善かれていることだとわかった。そしてボイルのすごさは、この本をもとに構成した4日間のセミナーで、受講者に本の内容をしっかり「わからせ」、彼らの人生に望みどおりの変化を起こす練習法を身につけさせてしまうところだ、ということも。
この「はじめに」 の冒頭で述べたように、ジョセフ・マーフィー博士は間違いなく、「自己イメージ心理学の偉大な創始者」 の1人だ。しかし、1963年に彼の著書が出版されてからも、この分野の研究は活発に続けられ、多くの新たな研究成果が積み上げられてきた。それに、私たちが暮らす今の社会は、およそ50年前の世の中とはすっかり変わってしまっている。
はじめは、マーフィー博士の原著に改訂と編集を加え、元のタイトル『眠りながら成功する』の後ろに「改訂版」とだけつ、け加えて出版するつもりだった。けれども、自己イメージ心理学の理論を詳しく調べて編集作業を進めていくと、現代にふさわしい研究データが次々と見つかり、マーフィー博士の原著の21世紀版の出版も可能に見えてきた。こうして生まれたのが、現代版としての本書である。
本書の目的は、自己イメージ心理学の分野で行われてきた新たな研究やその成果を読者に伝えることだ。さらに、オリジナル版にはなかった「実践的練習法」も収録している。また、マーフィー博士の原著にあった記述と、私が書き加えた箇所及びその他の部分がわかるように、博士の記述はゴシック体で、それ以外は明朝体で書き分けた。本書が、多くの読者にとって本当の意味で人生を変える契機となることを願っている。ここに書かれている知識は、学校や会社で習えるものではないからだ。
潜在意識の研究者、ジェーン・ロバーツの名著『セスは語る』(ナチュラルスピリット)にはこうある。
「外国の人々には名高いエンパイアトステートビルですが、長くニューヨークに住んでいながら、そこに行ったことのない人も多いようです。それと同じように、物質界に住んでいるみなさんの現実の中にも、これまで気づいてこなかった、未知のおどろくべき精神的あるいは霊的なしくみがあることを、お教えしようと思います。
けれど率直に言うと、私はそれよりずっと多くのことを望んでいます。私はみなさんの手を引いて、みなさんが体験できるレベルの現実を訪ね、みなさん自身の精神構造の中にあるさまざまな次元を案内したいのです。そして、これまで気づかれることの少なかった意識のあらゆる場所を開け放ちたいと思っています。つまり私は、人の精神にはさまざまな次元があることを説明するだけでなく、読者の1人ひとりに、自分自身が思いのほか大きな存在であることを知っていただきたいのです」
そしてこのセスの思いこそ、マーフィー博士と私が、これからこの本を読むみなさんに望むことなのだ。さあ、始めるとしよう。
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